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大好きな音楽の話をしたいな


by oldblues
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LOVESONGS

LOVESONGS_b0008880_2212637.jpg「反戦フォークの旗手」「フォークの神様」と呼ばれ、いつしか伝説のシンガーになった岡林信康には、シーンから姿を消していた時期があった。
やがて彼はカムバックすることになるのだが、その間に彼の中でどのような変化があったのかはわからない。おそらくは、音楽活動を停止し自然の中で自分を見つめ直す間に、偶像としての自分や貼られたレッテルから脱却する事に成功したのだろう。

プロテスト・ソングから出発し、ロック、演歌、エンヤトット、と次々に変化してきた彼からすれば、ここで採り上げた「LOVESONGS」というアルバムは、もしかしたら1つの通過点に過ぎないのかもしれない。だが僕は、このアルバムこそが、彼の長いキャリアの中でもベストと呼ぶに相応しい作品だと思うのだ。(この数年前に発売された「金色のライオン」も良いですがね)

1.Mr.Oのバラッド
2.みのり
3.からっぽの唄
4.五年ぶり
5.ラブ・ソング
6.カボチャ音頭
7.男30のブルースよ
8.ベイビー
9.花火

①は彼の自伝的な歌。高石友也に影響されて歌を始め、紆余曲折を経て現在に至るまでの経緯が、生ギター1本の演奏で淡々と語られる。②みのり⑨花火 は彼の子供達に対する語りかけの形式を取りながら、人間としての生き方や過去について考えさせられる名曲だ。

全ての収録曲が名曲と言っても過言では無いほどに質の高いアルバムだが、その中でも僕のイチオシはやはり⑤の「ラブ・ソング」だ。世の凡百のラブソングなら「君を愛している」「君を守ってあげる」と歌うところだがこの曲は違う。

人間は、最も愛する人に対しても、常に100%の愛情を注ぐことは出来ない。時には腹を立てたり、面倒くさくなったり、お互いの愛情に自信が持てなくなったりする事があるものだ。この曲ではそんな素直な心情をストレートに歌い上げている。本当に素直に正直に自己の感情を吐露しているので、それが聴く者の気持ちを打つのだろう。

ここまで書いてきて改めて思うのだが、このアルバムの楽曲は全て、岡林のピュアな気持ちを感じさせるものばかりだ。気負いや衒いも無く、ただありのままの無垢な魂がそこにある。そういう意味でこの作品は、「ジョンの魂」に優るとも劣らない価値があるのだ。

余談だが⑤や⑧にはバックでムーンライダーズが、⑥にはダウン・タウン・ブギ・ウギ・バンドが参加している。このあたりの演奏も聴き物である。
by oldblues | 2005-05-08 22:06 | 70's Rock&Folk(J)