East-West
2005年 05月 22日

彼等のやっている音楽は「ブルース・ロック」などと呼ばれ、ひとつのジャンルを形成するほどだったが、何故かブルース・ロックのバンドは圧倒的にイギリスに多かった。
しかし、ブルースの本場アメリカの白人達の中にも、ブルースに惹かれ「ブルース・ロック」をやっていた連中がいないわけではない。その代表選手と言えるのがポール・バターフィールド・ブルース・バンドだ。
このバンドは、リトル・ウォルターに直接教えを受けたという、白人ハーピストのポール・バターフィールドが中心となり、マイク・ブルームフィールドやエルヴィン・ビショップといった白人ミュージシャンと、ハウリン・ウルフのバックを務めたという黒人ミュージシャンが一緒になった、人種混成バンドだった。
「East-West」はそんな彼等が65年に発表した2枚目のアルバムである。曲目はブルースのカバーが多いが、タイトル曲の「East-West」は彼等のオリジナルで、演奏時間が13分以上という大作だ。ブルースを基本とした上にロックのスピリッツを加え、途中で展開される火の出るようなインプロヴィゼーションの応酬は、ロック史上に残る名演の1つだと言ってもいいだろう。
マイクの刻むリズムに乗せたエルヴィンのギター・ソロから始まり、バターフィールドのハープ、マイクのギターとソロが受け継がれる。やがて3人を中心とした演奏は複雑に絡み合い、お互いに刺激しあって、それまでに到達し得なかったほどの高みまで昇っていく事になるのだ。
ここでのマイクのギターは東洋的な旋律を取り入れ、それまでのブルース・ロックには無かった、新たな可能性を切り拓く事となった。こういう実験的な試みは往々にして上手く行かないものだが、この曲については非常な成功を収めている。まさに稀有な例だと言えるだろう。
余談だが、あのエリック・クラプトンですら「ブルースをより深く理解している」という意味で、マイクのギターにはコンプレックスを抱いていたという。そんな逸話を抜きにしても、彼のギターが素晴らしいのは言うまでも無いが、この「East-West」を聴けば、その理由が文句無しで納得出来るだろう。
by oldblues
| 2005-05-22 01:22
| Old Rock